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話題のブログ「動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか」に、ライブハウスオーナーが答えてみた

お久しぶりにブログを書きます。
(株)ケイピーエス、角田恭平です。

海保けんたろー(@kentaro_kaiho)さんのブログが話題になってますね。
ちょっと時間が経ちましたが、ライブハウスオーナーとして、アンサーブログを書かせて頂きます。
海保さんのブログを読んでいない方はこちらをご覧下さい。

まず、書きたいと思った理由。
それは、あのブログを読んで、誤解する人が出て来るだろうなぁと思ったから。
そしてそれが、ライブハウスシーンの未来に明るいものでは無い可能性があるなぁと思ったから。

その前に、私を知らない人の為に。
京都のライブハウス、GROWLYのオーナーをやっております。
今年で丸5年が経ちました。
熊本に生まれ、大学進学で京都に移り住み、バンドでドラムを担当し、CDリリースや全国ツアーを経験し、祇園の老舗ライブハウスWHOOPEE'Sで働き、会社を立ち上げGROWLYをオープンさせました。
GROWLYオープンの経緯は、こちらをご覧下さい。

それでは本題に移ります。
始めにいっておきたいことがあります。
それは、海保さんの本来の意図である、「ライブハウスシーンを良くしたい」という想いは、恐らく一致してると思います。
あくまで、海保さんの批判ではなく、補足。
京都にあるキャパ200人のイチライブハウス側の意見です。

指摘、補足したい部分を、海保さんのブログの流れに沿って書いていこうと思います。

■まず前提として。
>この海保さんのブログは、明言はされてませんが、「都内のライブハウス」に限定されてる様に思われます。
(後の方に「一気に都内のライブハウスが、一気に4分の1程度まで減るのだ。」と書かれているので、推測。)
海保さんは都内のライブハウスで何かを感じたのでしょう。

ただ、このタイトル、この書き方だと「全国のライブハウス」を対象にしてるとも取れるので、京都のライブハウスからも声を上げさせてもらう次第となりました。

■「趣味バンド、ノルマなしバンドはいい」について。
>これに関しては、僕も近い意見を持っています。
ライブハウスでライブをするということは、基本的に「ライブをしたい!」という気持ちがある人は全員が平等に持っていい権利です。
「こんなバンドはOK」「こんなバンドはNG」とかは基本的には無いと思います。
そのライブハウスのルールに則って、人を傷つけない限りは、誰でもライブをやっていいと思います。

ただ、海保さんはあのブログで言いたいことは、「もっとライブハウスの質、出演するバンドの質を上げて欲しい」というのが目的だと思うのですが、「趣味バンドは良い」とおっしゃるのは何故でしょう?
見に行ったライブに、趣味バンドが出ていても、文句は無いのでしょうか?
趣味バンドなら集客をしなくていいというは何故でしょうか?
「趣味バンドは本気バンドと対バンを混ぜるな」とか、「趣味バンドは趣味バンドだけのイベントに出ろ」等は書かれていません。
ここについては矛盾が生じます。

また、「ノルマなしバンドは良い」のところもちょっと引っかかります。
「ノルマなしバンド」とひとくくりに言っても、「ノルマなし」になったのは様々な理由があると思います。
その理由に言及せず、「ノルマなしバンドは良い」は何故でしょうか?
逆に私は、「意味の無いノルマなしバンドは悪」だと考えてます。
このブログを読んだ若いバンドが、「ノルマなしでライブハウスに呼ばれたら良いんだ」と勘違いし、何も考えず「ノルマのあるイベントは出ません」と言い続けることこそ、ライブハウスにとっては悪だと思います。

■「趣味バンド、ノルマなしバンドはいい」の最後の文章について。
そして、海保さんのブログの最も言いたい部分であると思われる「問題なのは、いわゆるプロ志向でありながら、チケットノルマを課され、それ以下の動員しかできない、というようなバンドである。」の部分。
ここですね。物議を醸す所は。
これについて、はっきりしとした理由が書かれていません。
推測ですが、海保さんは「動員出来ないバンド」=「良くないバンド」と決めているのではないでしょうか。
もちろん、「動員出来ないバンド」→「良くないバンド」もしくは「良くないバンド」→「動員出来ないバンド」は成り立つ場合も多々ありますが、必ずしもイコールではないと思います。
海保さんが新たに書かれた「謝罪と反論」に書かれている「チケットノルマ以下しか動員できないバンドは、ライブを休んで頭を使え」は支持する考え方でありますが、動員が出来ないバンド=悪という考えには賛同出来ません。
何故なら、動員はあくまで「結果」であり、イベント当日しかわからないからです。
努力をしないバンドは良くないと思います。
しかし、その努力が1回のイベントで実らなかったら、ライブを止めてしまえというのは、あまりにも乱暴ではないでしょうか。
バンドマンの「挑戦」を奪ってしまうことは、良くないと思います。

先にも書きましたが、私は、ノルマが有り無しに関わらず、「集客努力をしないバンド」は良くないと思いますが、「集客が出来ないバンド」を一括りに悪とするのには反対です。

■「ライブハウスを取り巻く問題」について。
ここのタイトルについても、一つ一つアンサーを出していこうと思います。

・スタッフが愛想悪い、分煙がされていない、ドリンクが薄い、食べ物がない、などの「ライブハウス・サービス悪い問題」
>大事な意見ですね。しかし、上記に上げられているもので、お金をかけずに解決出来るのは「スタッフが愛想悪い」のみです。
海保さんはライブハウスを立ち上げたこと、経営したことは無いかもしれないのでわからないかもしれませんが、現状営業をしてる店舗のスペースを増築することに関しては、ものすごい費用がかかります。
もしくは、お金だけ払えば済むという問題でも無いところもあると思います。

「分煙」に関してはスペースが無いと難しいです。(ちなみにGROWLYはホール内禁煙です。)
ただ、最近は健康増進法の施行により、分煙を義務づけられて来ているので、あながち誤った指摘ではありません。

「ドリンクが薄い」に関しては、ちょっと意味を汲み取るのが難しいですね。
「カクテルのリキュールが少ない」ということでしょうか。
「氷が多過ぎる」ということでしょうか。
いずれにしても、ライブハウスのドリンクスタッフはマニュアルに従って提供しているので、それがその店のフォーマットです。ファストフード店やファミリーレストランで同様のクレームを出してるのと同じです。
法律で「コーラを出す場合にはコーラと氷の割合を3:1にしなけらばならない」と決まってませんよね。
そのお店ごとで、ドリンクの提供の仕方は異なりますし、それがダメなことでは無いと思います。
ちなみにGROWLYでは、リキュールの濃さ、氷の量に関しては、言って頂ければ調整する様にスタッフに言っています。(限度はありますが)
一度、そのライブハウスでも言ってみたら、対応してくれる所はあるかもしれませんね。

「食べ物がない」もスペースの関係で難しい場合が多いです。
GROWLYでは簡単なスナック菓子は常時販売しており、イベントによってはフードスタッフを入れてフード販売をすることはありますが、全てのイベントで食べ物を用意するのは難しいです。
先にも延べた通りスペースの問題、仕入れの問題、人件費の問題です。
イベントに合わせて、ライブハウスのスペースに応じて販売することは、そのイベントの色付けにもなりますので、可能な場合はやった方が良いと考えますが、常にフード販売をすることを強く求めることはいかがなものでしょう。
ドリンクの件同様、お店の考え、スペック次第だと思います。

・集客についての努力をほとんどせず、出演するバンドの集客に全面的に頼っているという「ライブハウス・集客しろ問題」
>これは海保さんの言いたいことの重要な部分ですね。
これに関しては、海保さんがどうお考えなのかはわかりませんが、私は「ライブハウスはHP、Twitter、マンスリー等の紙媒体で宣伝しているので、それ以上は出演バンドが集客の努力をすべき」だと考えております。
「集客についての努力をほとんどせず」と言われるからには、そのライブハウスはHPも何も無いのかも知れませんが。

逆に、「ライブハウスが出演バンドの集客を責任もって行う」場合の人件費を計算してみましょう。
仮に1日に5バンド出演し、1ヶ月に25日営業がある場合、そのライブハウスでは一ヶ月に125バンドが出演します。
「このバンドが出演します」と告知しただけでは集客がノルマ以下のバンドを、第三者がノルマ達成までプロモーションをするのであれば、プロモーション係が1人で1ヶ月5バンドが限界だと思います。(ブッキング等の業務とは別にプロモーション部を立ち上げた場合)
すると、1ヶ月で125バンドの集客を達成されるのであれば、25人のプロモーション係が必要です。
仮に月給が15万円だった場合、15万円×25人=390万円の人件費が必要です。
プロモーション部で25人も増員となると、事務所スペースも足りない問題が出て来ますので、かさむ経費は人件費以外にもふくれあがると思います。
そうなると、ノルマは現状の倍以上に跳ね上がりますね。笑
恐らくノルマは30〜40枚になり、それを5バンドが達成すると毎回ソールドアウト。
夢の様な話ですね。
経営者目線で考えると、あまりにも夢物語で現実味がないため、キャパが200人前後のライブハウスでは経費を回収出来ないため、そんな博打は打てません。
最低限以上のプロモーションに関しては、レーベルや事務所が請け負う仕事であり、所属が決まるまではバンドマンが行うべきだと考えています。
(あくまで単純計算の試算です。)

・本来は協力関係にあるはずの出演するバンドからお金を取ることで、商売を成立させているという「ライブハウス・チケットノルマ問題」
>こちらも言い方は乱暴ではありますが、私もバンドをやっておりましたので言いたいことは分かります。
ですので、敢えてライブハウス側の意見を書かせてもらいます。
前提として、ライブハウスは「仕事」でやってます。「ボランティア」ではありません。
例えば、スノーボードが好きで、毎年雪山に滑りにいってる人。この人は、入場料やリフト代を払いませんか?
人より上手ければ、入場料が無料になる所はありますか?
ヨガを普及させたくて、ヨガ教室を開講してる人。全ての会員を無料で教えてる人いますか?
もしかしたらいるかも知れませんが、その人は他で収入を得てるからこそ、成立してると思います。
スノーボードが好きな人、ヨガを習う人は楽しみや満足を得る代わりに、対価としてお金を支払います。
これがサービス業として当たり前の流れです。

それが何故、ライブハウスでライブをするにあたって対価を支払わないことが正当化されようとしてるのでしょうか。
逆に、ライブハウスは、ノルマ分の集客をすれば、お金払わずにライブが出来ます。
むしろ、ノルマを超えればお金だってもらえます。
こんな素敵なシステム、他の業界にありますか?
これを「問題」と言ってしまうのは、集客努力にアグラをかいてる、バンドマンの言い訳だと思います。

楽器を買う時にはお金を払う。スタジオで練習する時にもお金を払う。ご飯を食べるときもお金を払う。酒代にもお金を払う。
だけどライブハウスにはお金を払いたくない。
あまりにも都合が良く、そしてライブハウスで働く人間の人権を無視した意見です。

■「問題解決の流れ」について。
この項目では、ノルマ達成出来ないバンドがライブを自粛することによって、(都内の)ライブハウスの7〜8割を潰してしまおうという、恐ろしい陰謀論が書かれてます。笑
そして、「音楽的にも素晴らしく、集客もできる、レベルの高いバンドしかライブハウスに出演できなくなるのだ。」という海保さんの求めるエデンへと到達。

ここで指摘したい所は、「音楽的にも素晴らしく、集客もできる、レベルの高いバンド」は誰基準なのか、ということです。
音楽は芸術です。
芸術は、絶対的評価ではなく、相対的評価です。
先にも書いた通り、「集客出来るバンド」=「音楽的にも素晴らしく、レベルの高いバンド」ではないのです。
この意見で辿り着くのは、「集客出来るバンド」のみが生存するエデンです。
友達をたくさん呼べるバンドも当然生き残っています。
演奏技術が低く、音楽もオリジナリティが無くても、集客力さえあれば生き残っています。
これが海保さんの望むエデンなのでしょうか?

そしてもちろんその中には、「音楽的にも素晴らしく、レベルの高いバンド」も生き残っています。
(レベルの高いというのは、演奏技術が高いということでしょうか?)
しかし、「誰が聞いても素晴らしいバンド」というバンドは存在しないと思っています。
売れてるバンドは、TVやフェスに引っ張りだこのバンドは、誰が聞いても素晴らしい音楽をやってますか?
売れてるバンドが素晴らしくないと言ってる訳ではありません。
もちろん、人によって感じ方は様々です。それが個性です。無くしてはいけないものです。
それを素晴らしいと感じない人だっている、ということです。

「演奏技術が高いバンド」は「素晴らしいバンド」ですか?これも一概には言えないと思います。
もしそうだとすれば、演奏技術が高いプロのミュージシャンがやってるバンドは全て売れるはずです。
駆け出しのバンドも、ライブなどせず、曲も作らず、ひたすら練習したら売れるという訳ではありません。
世の中、そんなに甘くないです。

音楽の感じ方は人それぞれですので、集客出来るバンド=誰にとっても良いバンドという固定概念は持たない方が良いと思います。
(もちろん集客出来るバンドになって欲しいですが。)

■「以下、ありそうな反論」について。
海保さん : 駆け出しのバンド(数が少なくたって楽しみにしてくれるファンがいる)が場数を踏むための場所は、広めの練習スタジオにお客さん入れてやったり、ライブバー的な狭いところでやればいいと思います。
>一つの意見としては良いと思います。
ただ、ライブハウスのブッキングは「出会い」が重要だと考えてます。
上記の策だと、自分の知り合いとしか対バンを組めない(ライブハウスではないためブッカーがいないと思われます。)ので、新しいバンドや考え方との出会いが無いと思います。
また、ライブハウスのブッカーと交流を持ち、様々なアドバイスを受ける機会が無く育ったバンドは、自分やメンバーの意見しかもらええないので、視野が狭くなりがちです。
さらに、ライブハウスと上記の場所との大きな違いは、「ステージがあるか無いか」でもあると思います。
ステージでライブすること、PAや照明とやり取りしながらライブを作ることが学べないと、バンドは成長しません。
もちろん上記のやり方も一つのやり方としてアリだと思いますが、集客が(まだ)出来ないバンドはライブハウスに出るなという意見は、駆け出しのバンドの選択肢を狭くしてしまうことには違いありません。

・海保さん : 自分の動員が少ないなら、対バンの動員も大抵少ないですよね?だとするとそのやり方は効率悪いので別の宣伝方法考えたほうがいいと思います。
>これも同意する部分はあります。
しかし、僕は逆に考えます。自分たちを知らない人の前でやりたいのであれば、まずは自分たちがお客さんを呼ぶこと。
そうじゃないと、フェアじゃない。
マイナスの解決法ではなく、プラスの解決法が欲しい。
もちろん、集客が上がらないのであれば海保さんの言う様に別の宣伝方法も考えた方が良いと思います。

・素晴らしいライブハウスはきっと生き残るから安心してください。
>ここまで意見したので、GROWLYがそうなるように、努力します。

■最後に
大変長くなってしまいました。
最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました。

冒頭にも述べましたが、今回は海保さんのブログのおかげで、このブログを書けました。
約3時間かかりました。笑
海保さんの問題提起は素晴らしいと思います。
バンドもそうですが、誰もやってないことをやることは勇気が要ります。
しかし、それを続けてこそ評価されます。
僕みたいに後からなんやかんや言うのは誰でも出来ます。

それともう一つ。
ここに書いた意見は僕個人の意見です。
ライブハウス全てが同じ意見だとは思っていません。
「うちはそんなこと思ってへんわ!」ってライブハウスの方々、怒らないで下さい。
飲みに行きましょう。笑

色んな地域、色んな規模、様々なライブハウスがあります。
僕のブログをきっかけに、ライブハウスがどう考えてるか、バンドとどう接しているか興味を持って頂ければ幸いです。

2017年5月15日
株式会社ケイピーエス
代表取締役 角田恭平(33歳独身)
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