【あらすじ】
今にも泣き出しそうな空の下、俺はMKタクシーに乗りながら国道一号線を北から南へと向かっている。
流れていく景色の中で、歩道橋の側に咲いている一輪のタンポポを見つけた。
急ぐ俺にタンポポはこう言う。
『20歳過ぎると早いわよ。楽しいことなんて何もない。まるで地獄みたい』
はいはいどうもありがとうよ！
俺とタクシーはタンポポを一瞥して通り過ぎる。
俺は、自分と同い年の人達について考える。
結婚して今年子供が生まれた昔の友人について考える。
中学生の頃初めてキスをした昔の恋人の現在について考える。
苦労ばっかりしていつまで経っても報われないあの人について考える。
カーステレオからはイギリス訛りの誰かの歌声が聴こえて来る。
『10階建てのラブソング。君の為に建てたんだ。』
ブレーキがかかり車が停まって、タクシーの運転手が言う。
『お客さん。着きました。天国です』
窓の外では雨が降り出した。
今日は俺の26歳の誕生日。