【GROWLYからの大切なお知らせアリ】 ライブハウスの入場時ドリンク代を0円にする方法
こんばんは。
(株)ケイピーエス代表角田恭平(病み上がり)です。
京都のライブハウスGROWLY、音楽スタジオAntonio、カレー屋240、三重のライブハウスANSWERの4店舗を経営しております。
(他にも色々やってますが)
今年も残す所あと2ヶ月を切りましたね。
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【2018年1月17日追記】
このドリンク代のブログをきっかけに、新しいブログを立ち上げました。
こども社長の魔法のブログ
こちらもよろしくお願いします。
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超いきなりですが、
GROWLYは2018年1月1日より
入場時のドリンク代を500円→600円に値上げさせていただきます。
(入場時にチケット2枚お渡しします。アルコールと交換なら2枚必要、ソフトドリンクと交換なら1枚必要という制度は継続いたします)
値上げに関しては、GROWLYに来ていただいてるお客様、使ってくださるバンド・イベンターの皆さまにご負担をおかけすることになるので、申し訳無く思っております。
「ドリンク代0円にする方法ってタイトルで、いきなり値上げしますとか頭おかしいんちゃうか!?」
と早速突っ込みが飛んで来そうですが、600円に値上げする経緯と、0円にする方法をちゃんと考察していきますので、良ければ最後までお付き合いください。
※このブログでは色々書きますが、あくまで僕個人の考えです。違う考え方でライブハウスを経営されてる方もたくさんいらっしゃると思います。
あくまで一例として捉えてください。
※めちゃくちゃ長くなっています。「来年からドリンク代あげまーす!ごめんなさーい!」の一言だけで済ませたくなかったのでこのブログを書こうと決意した結果こうなったので、読んで欲しいですし、最後まで読んでくれた人大好きです。
特にバンドマンにも読んで欲しい!!
(めちゃくちゃ長いですが、うちの敏腕店長安斎に読ませた所、5分で読めるって言ってました。)
■ライブハウスに入場する時のドリンク代とは
一度でも「ライブハウス」という場所に来たことある人はわかるかもしれませんが、ライブハウスに入場する際には「チケット代」とは別に「ドリンク代」というものがかかります。
ドリンク代は大抵500円が相場でしたが、消費税の増税・酒税の増税を背景に、600円に値上げするライブハウスが近年増えています。
全国の「ライブハウス」と呼ばれる場所の9割以上はこのドリンク代制度を導入していると思われます。
簡単に説明するなら、居酒屋の「お通し」的なヤツですね。
「頼んでないのにおつまみ出されて、レシート見たらきっちり取られてるー!!」的なヤツです。
■なぜドリンク代の相場が500円だったか
これには諸説あると思いますが、僕なりの見解を書きます。
まず一つ目の理由は、「ワンコインだから」だと思われます。
チケット代が1500円だったら2000円になるし、2000円だったら2500円、2500円だったら3000円という風になります。
前売りチケットをプレイガイド等で購入された場合は、チケット+500円という形になりますよね。
ライブハウスは、時に100人以上のお客さんを、30分という短い時間で入場させなければいけません。
その為に、お釣りが細かくなったり、ピッタリお金を用意できない場合に時間がかかるので、その手間を省くためです。
二つ目の理由として、「多様なドリンクの値段を平均化した金額だから」もあると思います。
ライブハウスにはコーラやウーロン茶等のソフトドリンクから、ビールやカシスオレンジといったアルコールまで多く取り揃えてる所が多いです。
その値段を平均化したものが500円だったからだと思います。
■ドリンク代500円の内訳
飲食店を経営されたり、経理を担当されたりした方はわかるかもしれません(これから勉強しようという方も必ず通ると思われます)が、飲食店の値段の決め方の法則に「原価3割」というものがあります。
「原価が3割になるように売値を付ける」ということです。
例えば、仕入れ価格が税込100円だとしたら、売値は税込333円が適当です。
仕入れ価格が税込200円だったら、税込667円が適当です。
「残りの7割が儲け?」と思われるかもしれませんが、違います。
一般には「原価3割+人件費3割+販管費3割」で9割を占め、残りの1割が利益だと言われています。
人件費はわかりますよね。販売員のアルバイト代や給料です。
販管費は正式に書くと「販売費及び一般管理費」の略称です。
GROWLYでいうと、冷蔵庫・製氷機の購入金額・リース代、電気代、メンテナンス費用、設置してる場所の家賃、水道代、コップ代、洗剤代等です。
「1杯のドリンクを出すのにも、それだけの費用がかかってるのかー。」ぐらいで良いです。もし知らない人がいたら少しでも知ってもらえると嬉しいです。
GROWLYのドリンクは、仕入れ価格が100円前後の物もあれば、200円を超える物もあります。
なるべく仕入れ価格が100円に近いものは300円で、200円に近いものは600円で販売することで、お酒を飲まない人にも平等に感じて欲しくて、ドリンクチケット2枚制度を導入しています。
300円で飲めるお酒も用意しています。
僕も昔はお酒が飲めなかったので、「500円でコーラ1杯は高いなぁ」と思っていました。(実際に今も高いと思う)
それを解消するために考えたシステムです。
上述した「ソフトドリンクからアルコールまでの販売価格を平均化した金額が500円」だったのは、このシステムが始まった頃の物価・税率ありきの計算だったと思われます。
僕が初めてライブハウスに行った頃は消費税は3%でした。
ところが現在は消費税8%、酒税もあがり、2019年には消費税が10%に上がると言われてます。
実は、このシステムを導入したオープン当初から、500円だと採算が取れないのはわかっていました。笑
GROWLYがオープンする時には既に消費税も5%で、8%に上がると言われていたので、時代的に500円設定に無理があったと思います。
消費税が5%→8%に上がったタイミングでドリンク代を600円に上げたライブハウスも増えましたが、GROWLYは意地で耐えて来ました。
なんとか今年まで頑張ってきましたが、酒税・消費税の値上げでトドメを刺された次第です。
(税金については後述します)
■そもそも、なぜドリンク代が必要なのか
なんか数字がいっぱい出てきてすみません。
なるべくわかりやすいように書いていきたいと思います。頑張ります。
どこのライブハウスが始めたかはわかりませんが、僕がライブハウスに最初に行った約15年前からこのシステムはありました。
上記のような経費がかかるのに、なんでそこまでしてドリンクを売ろうとするの?と思うかもしれません。
ドリンク自体を売らなければ、お客さんも安くでライブハウス来れるのでハッピーじゃん?と思う人もいるかも知れませんが、そうは問屋が卸しません。
そもそもの始まりは、「ライブハウスは飲食店である」という概念に基づいていると思われます。
ライブハウスをやる事業者は「飲食店営業許可」か「興行場の許可」のどちらかを取らなければなりません。
(話題の「風営法」はオールナイト営業等にかかるいわゆる"クラブ"の方なので、ライブハウスは該当しません)
比較的小さい(キャパ300以下くらい?)の場合は飲食店営業の方が取りやすいので、街の小さなライブハウスはほぼすべて飲食店営業許可を取って開業しました。
しかしいざ始めて見ると、日本人は音楽を聴きながらお酒を飲まない。
ソールドアウトするような人気のバンドのワンマンの時に誰もドリンクを頼まない。
バーカウンターを維持して行けない。。
ライブハウスは飲食店である→バーカウンターが必要→ドリンクを強制的に売るシステム(1人1杯くらい飲んでよ)が必要
そうやって生まれたのがこのドリンクシステムです。(妄想)
このドリンクシステムはものすごく画期的なシステムで、僕は導入した人がもし名乗り上げてくれるなら、握手してツーショット撮ってインスタにあげたいくらいです。
(インスタ始めました。アカウントはツイッターと同じkyoopeesです。)
どこが画期的か、めちゃくちゃ簡単に説明します。
まずバンド・お客さん側から言うと、「お酒が回ってくると楽しくなってきて、音楽自体が楽しみやすくなる」というメリットがあります。
これは、もしかしたら日本人には伝わりにくいと思いますが、ライブハウス(という建物は日本独自と言われてます)が発祥した海外では、ライブはバーの一角にあるスペースで演奏され、客は酒の余興として楽しむものだとされてます。
※これも諸説ありますので、あくまで僕の見解です。
そしてお酒があればバンド同士、お客さん同士、バンドとお客さんも話しやすくなって距離が近くなります。
お酒と音楽は密接な関係にあって、楽しくなればバンドもお客さんもハッピーになれます。
盛り上がってないライブより、盛り上がってるライブの方が楽しいですよね。その為の導入材的な役割です。
ライブハウス側から言うと、「他にかかってる経費を軽減してくれる」という側面があります。
ドリンクの利益を他の経費に回すことによって、経営を続けていけるので、三者ハッピーなシステムだと思っています。
■ライブハウスの経費内訳
また数字の話かー。頑張って書くので頑張って読んでください。
何にいくらかかってるのか羅列しようと思いましたがキリがないのでぶっちゃけて言います。
GROWLYの立ち上げにかかった費用は…●千万円です!
●の中の数字は、、、そうですね、、、5に近いです。笑
もちろん全額僕が持っていたわけではありません。いろんな方面から借金をしました。
それを毎月●十万円ずつ返済しています。あと5年くらいはかかるかな、、。
それとさらに、何か壊れたら修理代もかかりますし、どデカイエアコンも付けてるし照明もチカチカしてるので電気代もアホほどかかります。
電気代は僕の住んでる家と比べると、約100倍かかってます。(リアルに)
そして働いてる人、イベントを組む仕事の人、音響や照明をする人、ドリンクカウンターや受付にいる人、もちろん全員に給料を払ってます。
僕がこの会社を立ち上げた理由はたくさんありますが、その大きな一つに「"音楽業界の会社はちゃんとしていない"というレッテルを貼られたくない」というものがありまして、これはまた違う機会に詳しく書けたらと思いますが、とにかく、ちゃんと給料を払う会社でありたいと思っていまして、スタッフが胸をはって「ケイピーエスで働いてる!」と言える会社にしていきたいと思っています。
ザックリ書きましたが、ライブハウスを立ち上げて、それを維持するのにめちゃくちゃお金がかかるっていうのが伝わればそれで大丈夫です。
■売上と仕入れ価格と税金の関係
また数字の話ですねー。頑張って簡潔に書きますね。
従来のドリンク代500円を例に書きます。
この「500円」という数字は、税込み価格ということになりますが、正確には税抜き463円です。
ドリンクの販売価格は、本体価格463円+消費税37円=税込500円ということになります。
でも、500円の中に消費税が入ってるかなんて、あんまり考えた事ありませんよね?
ここに最大の罠があります。
原価が税込150円(税抜き139円)なら税込500円で販売出来ますが、原価が税込162円(税抜き150円)なら税込540円で販売しなければいけません。
もし仮に原価が税込162円の物を税込500円で販売した場合、会社に残る利益は何と、、、
「1円」です、、、、!(注1)
GROWLYでは、アルコール類の仕入れ価格は大体税込200円前後です。
税込仕入れ価格が税込200円を超えるものあります(ビールは税込200円余裕で超えてきます、、、!)から、540円では足りない場合が多々あるのです。
■酒税の話
酒税の話が抜けてますよね。2017年6月1日から酒税が上がりました。
これに関しては、アルコール度数とかで税率が変わってくるので、簡単に言うと、「酒の製造者が出荷する時にかかる税金」です。
この税金が上がりました。
なので、酒のメーカーさんが酒屋さんに出荷するときの税金が上がったので、今までと同じ利益を取りたければ、出荷する値段が上がります。
実際にGROWLYが仕入れてる酒屋さんでも仕入れ価格が上がりました。
従って、酒屋さんからお酒を仕入れるライブハウスなどの飲食店も、今までより仕入れ価格が上がったのです。
メーカー → (酒税アップ) → 酒屋さん → (消費税アップ) → ライブハウス → (販売価格アップ) → 消費者
という感じですかね。
これが、増税による販売価格の引き上げの理由です。
税金ダブルアップはきついぜえ。。
■なぜドリンク代の値上げが相次いでいるか
と、まぁここまで書いて来た通りなんですが、一言でまとめると、
「お酒の利益を従来よりあまり減らない様にして、その利益を他の経費に回すため」
です。
そのままの販売価格で売り続けると、酒税アップ&消費税アップによって上がった原価をライブハウスが全て負担することになりますからね。
■ドリンク代を0円にする方法
やっと出て来ました。タイトルのやつ。
ここまで書いて、そんな方法あるんですか?あるんです。
ズバリ言います。
「他の売上を上げる」
もしくは
「他の経費を下げる」
です。
※あくまで、現状のライブハウス(GROWLY)のスタイルを変えずにやれること考えます。
具体的に言いましょう。
まず「他の売上を上げる」=「チケット代、ハコ代を上げる。」
これではお客さん、出演バンドに今まで以上の負担をかけてしまいます。
GROWLYのスタイルとして、なるべく低価格・負担を少なくし、イベントを行う事で音楽シーンの活性化・発展を目指しています。
「今でも充分たけーよ!」と言われたらそれまでですが、現状維持するには、上記した様にお金がかかるので、現状の価格設定でもギリギリなのです。
では「他の経費を下げる」ではどうでしょう。
これには大きく分けて二つ方法があると思います。
「バンドのチャージバック(ギャラ)を下げる」
と、
「ライブハウスの設備や機材のランクを落とす、壊れても修理しない、スタッフの給料を下げる等」
です。
どちらも、個人的にはしたくありません。
「いやいや、ここの経費下げろよ!」という意見が多ければ検討しますが、なるべくやりたくありません。
逆に言えば、この経費に関して言えば、将来的にどれも上げて行きたいと考えています。
バンドに返せる分は多くして行きたいし、設備や機材はもっと充実して良い環境を提供して行きたいし、ちゃんと給料を払って働くスタッフのモチベーションを上げるとともに雇用をもっと産出していきたいです。
「雇用の産出」に関しては、音楽シーンを飛び越えたテーマになって来ますが、これも真剣に考えています。
■というわけで
めっちゃ長くなりましたが、「来年からドリンク代あげまーす!ごめんなさーい!」で済ませたくなかった結果、ここまで長くなってしまいました。
オチが一休さんの「屏風の虎」じゃねーかよ!と言われたらそれまでですが。笑
入場時のドリンク代は上がりますが、おかわりの現金価格は500円を維持していきたいと思っています。
300円で飲めるアルコールも用意しています。
「nomoca」という3杯分払うと1杯分が安くなるシステムも導入しました。
今後も、税金等と戦いながら、楽しめるライブハウスを作っていきたいと思っています。
このブログを読んで、「あのこどもみたいな社長も色々考えてるんだな」くらいに思ってくれたら嬉しいです。
決して、「他のライブハウスも上げてるしうちも上げるか!」みたいな安易な考えではないです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
今後も、より良い環境を整えて維持することが、バンドのため、お客さんのため、会社のため、京都の音楽シーンのため、日本の音楽シーンのため、社会のためだと思っていますので、頑張っていきたいと思っております。
「入場時ドリンク代600円かー、高いなー」と思われるかもしれませんが、ご理解頂き、その1杯、あと1杯が京都の音楽シーンに繋がる様、努力していきたいと思ってます。
(GROWLYではドリンクを持ち込みされる方がすごく少ない様に感じてます。ありがとうございます。)
今後ともよろしくお願いします。
平成29年11月13日
株式会社ケイピーエス代表取締役
角田恭平(33歳独身)
※文中にも書きましたが、あくまで私個人的な考えです。
「うちのライブハウスは全然ちげーよ!」って方、怒らないで下さい。笑
飲みに行きましょう!
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【2018年1月17日追記】
このドリンク代のブログをきっかけに、新しいブログを立ち上げました。
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こちらもよろしくお願いします。
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(注1)ドリンクの販売価格が500円で、消費税の40円を上乗せしなかった場合の計算をしてみます。
「原価3割+人件費3割+販管費3割」で考えていきます。
あくまで計算上の数字です。
仕入れ価格が3割なので税抜き150円ですよね。
でも税込仕入れ価格は162円です。
500円-162円=338円が粗利と呼ばれるものになります。
ここからさらに販管費を引きます。
販管費も売値の3割なの税抜き150円だとしたら、税込価格は162円です。
338円-162円=176円。
さぁ、ここから人件費を引けば利益になる?と思いきや、ここでのしかかってくるのが消費税です。
消費税は、売上から人件費以外の経費を引いた、残りの金額の中の8%を国に納めなければいけません。
わが会社は上述した通り、社会的に胸をはっていきたい会社なので、当然税金は払います。
176円×8/108=13円。
よし、13円を払ったら163円残ったぞ。
人件費にも3割払うから162円を引いて…
163円-162円=1円。
……1円???
500円売上あって、会社に残るの、1円???
(逆に1円残って良かったけど、仕入れ価格がもう少し高かったら赤字だよ…)
※あくまで計算上です。1杯出したら給料を出すみたいなシステムではありませんからね。笑
そうです。これが罠なのです。
仕入れ価格が税込162円として計算してるのであれば、販売価格は
162円×10/3=540円。
540円が正解なのです。
売値の500円にも消費税率8%をかけてみましょう。
500円×8%=540円。
ピッタリ合いました。原価150円のものを500円で販売したければ、税込540円でもらわなければいけないのです。
(きっちり消費税を上乗せして税込540円で売った場合は、38円利益が残ります。)
逆に言えば、税込500円(税抜き463円)で販売する為には、原価は税込150円(税抜き139円)で押さえなければいけません。
税抜き139円では、ビールは仕入れられません。